

幾重にも重なる黄金の花びらは、やわらかな光を抱くように揺れ、まるで時を忘れてしまったかのような静けさをまとっています。春から初夏へと移ろうこの季節、その色は周囲の緑の中でひときわあたたかく、見る者の心にそっと沁み入ってきます。
思い返せば数年前、この山吹は心ない形で切られてしまいました。おそらくは境内を整えてくださる中で、花を知らぬままに手を入れられたのでしょう。けれども、その後の数年、花をつけることなく過ごした姿を見ていると、どこか寂しさが残り続けていました。
それだけに、今年こうして再び花を咲かせた姿に出会えたときの喜びは、言葉に尽くしがたいものがあります。切られてもなお、土の中で静かに力を蓄え、時を待ち、再び花開く——その姿は、ただの草木ではなく、まるで生きる意志そのものを見せてくれているようです。
自然は、何も語りません。けれど、その営みの中には、私たちが忘れかけている大切なものが宿っています。急ぐことなく、争うことなく、ただあるがままに季節を受け入れ、やがて訪れる時に花を咲かせる。
この山吹の花は、そんな静かな教えを、そっと伝えてくれているように思います。
どうか境内にお越しの際は、鐘楼のそばに咲くこの小さな命にも目を向けてみてください。数年の時を越えて咲いたその一輪一輪が、きっと心にやさしい余韻を残してくれることでしょう。合掌